スケールの大きい未来が見えたのは、頼もしい「伴走者」の存在があったから
スケールの大きい未来が見えたのは、頼もしい「伴走者」の存在があったから
SDGsの一環として注目されている、食品ロス問題。その問題にいち早くから取り組んできたサービス「フリフル」を運営する、株式会社Day1の坂口龍也社長にお話を伺いました。 デイリースポーツ案内広告社のソリューションを取り入れた結果、どのような効果があったのでしょうか?
株式会社Day1
代表 坂口龍也
熊本県出身。地元熊本での食品ロス問題を知り、それを解決したいという思いで2017年に「フリフル」を立ち上げる。廃棄されてしまう規格外野菜を買い取ってプレゼントするサービスや、リアルな場で食品ロス削減の啓蒙を促す活動を実施。「フリフル」は農業系メディアとして日本一の規模を誇る。
プロデューサー・統括責任者:佐藤 美由紀
クリエイティブディレクター:村田 理里子
課題
ーサービス継続のための広告施策のためのノウハウや人脈が自社にない
ー食品ロスの本質的な削減のためのアイディアが欲しい
解決
ーデイリースポーツ案内広告社が持つ広告の知見や横のつながりを課題に合わせて構築し、事業をサポート
ー業界の枠を超えてサステナブルを実現するアイディアを提供、実現
「もうあの光景を見たくない」目の当たりにした農業のジレンマ
まずば、「フリフル」がどのようなサービスかを教えていただけますか?
フリフルは、規格外などの理由で市場に出荷できない農産物を農家さんから直接仕入れて、欲しい人とつなぐサービスです。
立ち上げのきっかけは今から12年ほど前、地元熊本で一面の白菜をトラクターがバリバリと潰す光景を見たことです。当時の僕はお金がなかったこともありますが、それが相当ショッキングで。
なぜそんなことをするのかと農家さんに聞くと、その年は豊作で白菜の価格が下がり、いくら出荷しても利益にならないから、わざと廃棄しているのだと知りました。手塩にかけて立派に育てた野菜を自らの手で潰してしまうことに、ものすごい葛藤と罪悪感を感じてらっしゃったんですよね。
市場の原理だから仕方ないのかもしれないですが、僕にはそれがどうしても納得できなくて。もうあの光景を見たくないな、何かできることはないだろうかと考えたことが、フリフルの原点です。
今でこそ食品ロスの問題は広く課題視されていますが、当時は全く知られておらず、規格外の野菜は捨てるものという固定概念が強かった時代です。
その空気感の中で、まずは問題提起をする意味でフリフルの活動を始めました。食べられるのに捨てられてしまう農作物があることを、とにかく多くの人に知ってもらいたかったんです。
思いはあっても、課題解決のためのノウハウもきっかけもゼロだった
まず始めたのは、僕らが売れない農作物を買い取って、欲しい人に無料でプレゼントする懸賞サイトの運営です。プレゼントにした理由は、予測できない食品ロスの発生に対して、販売形式では課題を解決できなかったから。プレゼントであれば、捨てられる運命にある農作物を確かに欲しい人に届けられると考えました。
しかし、この活動を続けるためにどう経済合理性を追求していくかは、考えなくてはいけません。そこで必要だったのが、広告を用いた施策。とはいえ、そのノウハウや人脈を自分たちが持っているはずもなく…。悩んでいた時に、佐藤さんと出会いました。
そうですね。2019年12月、冬至をテーマにしたイベントで主催者の方から坂口さんをご紹介いただきました。かぼちゃや椎茸など旬の野菜を用いてコース料理を提供するイベントで、フリフルさんがお野菜を提供していたんですよね。その中で椎茸の軸を使った唐揚げがあって、すごく美味しかったことを覚えています。今まで何気なく捨てていたけど、こんなに美味しいなら捨てるのもったいない!という気づきがあって。
その気づきを体験してもらえたのが嬉しいです。その時は食品ロス問題はだいぶ認知されてきていたので、問題提起のフェーズからもう一歩進めたいと考えていて。捨てているものでも美味しいということを伝えたかったんです。
この思いを聞いて、すぐに意気投合しましたよね。当時、坂口社長は熊本にいらっしゃって、都市部をメインに広告収入を広げたいけれど東京のマーケットが全然わからない、どうやったらいいんでしょうか、とご相談を受けました。じゃあ一緒にやりますか、という感じでお取り組みが始まって。
広告のノウハウはゼロですし、賛同してくれる企業を探したいけど、知り合うきっかけもなくアプローチできない。そんな僕たちに対して、佐藤さんはじめプロジェクトチームの皆さんは広告運用だけではなく、課題解決に向けた事業計画からコンサルしてくださることになりました。
「もうあの光景を見たくない」目の当たりにした農業のジレンマ
まずば、「フリフル」がどのようなサービスかを教えていただけますか?
フリフルは、規格外などの理由で市場に出荷できない農産物を農家さんから直接仕入れて、欲しい人とつなぐサービスです。
立ち上げのきっかけは今から12年ほど前、地元熊本で一面の白菜をトラクターがバリバリと潰す光景を見たことです。当時の僕はお金がなかったこともありますが、それが相当ショッキングで。
なぜそんなことをするのかと農家さんに聞くと、その年は豊作で白菜の価格が下がり、いくら出荷しても利益にならないから、わざと廃棄しているのだと知りました。手塩にかけて立派に育てた野菜を自らの手で潰してしまうことに、ものすごい葛藤と罪悪感を感じてらっしゃったんですよね。
市場の原理だから仕方ないのかもしれないですが、僕にはそれがどうしても納得できなくて。もうあの光景を見たくないな、何かできることはないだろうかと考えたことが、フリフルの原点です。
今でこそ食品ロスの問題は広く課題視されていますが、当時は全く知られておらず、規格外の野菜は捨てるものという固定概念が強かった時代です。
その空気感の中で、まずは問題提起をする意味でフリフルの活動を始めました。食べられるのに捨てられてしまう農作物があることを、とにかく多くの人に知ってもらいたかったんです。
思いはあっても、課題解決のためのノウハウもきっかけもゼロだった
まず始めたのは、僕らが売れない農作物を買い取って、欲しい人に無料でプレゼントする懸賞サイトの運営です。プレゼントにした理由は、予測できない食品ロスの発生に対して、販売形式では課題を解決できなかったから。プレゼントであれば、捨てられる運命にある農作物を確かに欲しい人に届けられると考えました。
しかし、この活動を続けるためにどう経済合理性を追求していくかは、考えなくてはいけません。そこで必要だったのが、広告を用いた施策。とはいえ、そのノウハウや人脈を自分たちが持っているはずもなく…。悩んでいた時に、佐藤さんと出会いました。
そうですね。2019年12月、冬至をテーマにしたイベントで主催者の方から坂口さんをご紹介いただきました。かぼちゃや椎茸など旬の野菜を用いてコース料理を提供するイベントで、フリフルさんがお野菜を提供していたんですよね。その中で椎茸の軸を使った唐揚げがあって、すごく美味しかったことを覚えています。今まで何気なく捨てていたけど、こんなに美味しいなら捨てるのもったいない!という気づきがあって。
その気づきを体験してもらえたのが嬉しいです。その時は食品ロス問題はだいぶ認知されてきていたので、問題提起のフェーズからもう一歩進めたいと考えていて。捨てているものでも美味しいということを伝えたかったんです。
この思いを聞いて、すぐに意気投合しましたよね。当時、坂口社長は熊本にいらっしゃって、都市部をメインに広告収入を広げたいけれど東京のマーケットが全然わからない、どうやったらいいんでしょうか、とご相談を受けました。じゃあ一緒にやりますか、という感じでお取り組みが始まって。
広告のノウハウはゼロですし、賛同してくれる企業を探したいけど、知り合うきっかけもなくアプローチできない。そんな僕たちに対して、佐藤さんはじめプロジェクトチームの皆さんは広告運用だけではなく、課題解決に向けた事業計画からコンサルしてくださることになりました。
コンセプトとKPIを明確にして、「お客様参加型」のサイトへリニューアル
坂口社長の思いを伺って、まずはフリフル自体のコンセプト開発をご提案しました。フリフルは、ロスされる農作物が無料でもらえる懸賞サイトから、日本における食品ロス問題のリーダーシップをとる存在へ。コンセプトも「考える、食べる、未来へ。」という表現に一新しました。
次に取り掛かったのがWebサイトのリニューアルです。以前と大きく変わった点は、「取り組み参加型」のポータルサイトへの変更です。ただ無料で野菜を貰う場ではなく、誰もが参加できる食の循環づくりのための場なんだよ、と見せ方を変えました。
その次に取り掛かったのは、事業計画です。ここで一番大切にしたのは、2つのKPIの設定でした。
1つは、食品ロス削減活動の参加人数を増やすこと。フリフルでは規格外野菜のプレゼントに応募する方をサポーターさんと呼んでいるのですが、人数があまり多くなかったんですよね。
そうですね。当時は40人ほどでした。応募したらほぼ全員当選するような感じで(笑)。
それはそれで嬉しいんですけどね(笑)。そこから、まずは日本全体にサポーターさんを増やしていこうと目標を定めました。
もう1つは、毎年のフードロス削減量の「見える化」です。数値化してサイト上で周知することで、サポーターさんがどれだけ活動に貢献できているのかを実感してもらえるように工夫しました。
人数を増やすと同時に、その方達にどう食品ロス削減に参加している実感を持ってもらうか。この2つのKPIによって、フリフルとサポーターさん、農家さんの関係性を構築する方法を、すごく大切に考えました。
このアイディアによって、運営している僕たちですら知らなかった月ごとのロス削減量を広く周知できたことは、かなり大きなメリットです。ちなみに2021年度の達成率は98%で、ほぼ100%。どの農家さんもこの見える化を非常に喜んでくださいますし、僕たちも一番のポイントに感じています。
みんなを笑顔にするために「伴走」してくれる存在
サイトのリニューアルにあたり、ロゴも制作していますよね。
コンセプトやKPIをどう外部に見せていくかというところで、坂口社長の思いをサイトデザインやロゴの開発に落とし込んでいきました。
特にロゴは、フリフルの取り組みでみんなが笑顔になることを視覚化する意図で作っています。最初いくつかパターンをお出ししたのですが、社長はこれで即決という感じでしたね。
直感で、これだと思ったんですよね。
このロゴのように、サポーターさんと農家さん、両者が笑顔でつながることを実現できればいいなと思います。
そうですね。少しずつですが、実現できていると思います。今、サポーターさんから聞こえてくるのは、食品ロスの問題を知ってもどうしたらいいのかわからなかったから、貢献できる場所があってよかったというお声です。
そして、ポータルサイトという位置付けで農作物に関する発信を始めたことで、規格外野菜ならではのメリットを感じて、リピートしてくれるサポーターさんが増えました。
まだまだ知られていないことですが、傷が入ったため規格外となり出荷されない果物の中には、店頭に並ぶものより糖度が高いものが、場合によってはあるんですね。野菜でも、小さい「ちびニンジン」などが規格外として出るのですが、ニンジンは普通サイズのものを1本使い切るのってなかなか難しいから、逆に使い勝手の良さがある。
そういうお話を知れると、規格外野菜のイメージが変わりますよね。ポータルサイトとして生まれ変わってまだ2年目ですが、これからもっと食品ロスのことを考えるきっかけを作るサイトにしていきたいですね。
はい。僕らは活動に対しての思いはあるけど、それをどう咀嚼して広く伝えるか、どう事業として成り立たせていくかの感覚が、わからなかったんですね。そこをデイリーさんが一緒に動いて「伴走」してくれることが、とてもありがたいです。
日常のコミュニケーションもスムーズですし、僕らの思いを理解してくださっているという安心感があります。うまく伝わらなかったり意図と違うものが出てきたりしたことも、今までありません。
本物のサステナブルを実現する未来へ
食品ロスという言葉は広まってきましたが、フリフル自体はまだまだ認知されていないので、より多く、日本に暮らす全ての人に知ってもらいたいという思いがあります。
若い方たちやお子さんがいらっしゃる世代の方への食育なども考えています。幅広い世代にリーチしていきたいです。
そうですね。フリフルはこれからもっともっと大きくなっていくサービスだと思います。世代を超えてもそうですし、活動に賛同してくれる企業の方たちともつなげていきたい。ただ食品ロスを削減するだけではなく、もっと大きな視点で未来を考えています。
食品会社だけでなく、学校や介護施設など、業界の枠組みを取り払った地球課題に対しての解決策として、この活動を広めていきたいですね。
例えば今、服部栄養専門学校さんと「フリフルフード」という規格外野菜を使ったオリジナルブランドを開発しています。食卓においしい料理が並びながら食品ロス削減にも貢献していると感じられる。そんな風に、農業への新しい関わり方が見えてくれば嬉しいですね。
こういうやり方もあるんだ、この取り組みいいねって、多くの方に関心を持ってもらえるきっかけを、私たちは増やしたい。我が社としてもSDGsへの取り組みは強化していますし、食品ロス削減のためのアプローチ方法やアイデアはいくらでもあります。ご提案は、お任せください。
頼もしいです。僕らとしては、中長期的に、よりサステナブルな仕組みを作ることにも挑戦していきたいと考えています。
食品ロスの原因として農産物の規格の存在がありますが、そもそも「規格が無い野菜」という新しい選択肢があってもいいと思うんです。実は2022年3月から、自分たちで農地を借りて、農業をやってみることにしました。収益がちゃんと成り立つような、サステナブルな農業の仕組みを探っていくためです。
本当のサステナブルって、水田を守ることから始まるんですよ。水田に雨水が溜まると、ダムのような機能を果たします。それで水害も予防できるし、水田から地下に水が染み込んで濾過されたものが、僕らが飲む水にもなっている。すべてはつながっているから、消費目線だけでいては、本当の意味でのサステナブルは達成できないんです。
こういう大きなスケールで問題を捉えながら、フリフルをもっと成長させたい。そしてその先は、世界にもこの活動を広めていきたいですね。